はじめての衝突解決リーダーシップ

はじめての衝突解決:合意した解決策が実行されない?チームに浸透させるステップ

Tags: 衝突解決, チームマネジメント, リーダーシップ, 実行力, コミュニケーション

解決策への合意はゴールではない

チーム内の衝突が発生し、話し合いを経てメンバー間で解決策に合意できたとき、リーダーとして大きな達成感を感じることでしょう。しかし、残念ながら、その合意された解決策が必ずしもスムーズに実行され、チーム全体に浸透するとは限りません。

「話し合いであんなに盛り上がったのに、なぜ誰もやらないのだろう」 「決まったはずなのに、また同じ問題が起きている」

このように感じた経験は、初めてチームリーダーになった方にとっては特に戸惑いやすい状況かもしれません。衝突解決のプロセスにおいて、解決策への「合意」は重要なステップですが、それはまだ通過点の一つです。合意内容をチームに浸透させ、実際に現場で実行されるように導くことこそが、リーダーの次の重要な役割となります。

この記事では、なぜ合意したはずの解決策が浸透しにくいのか、その原因を探り、初めてのリーダーでも実践できる、解決策をチームにしっかりと浸透させるための具体的なステップを解説します。

なぜ合意した解決策が浸透しないのか?考えられる原因

解決策がチームに浸透しない背景には、いくつかの理由が考えられます。多くの場合、それはメンバーの意欲がないからという単純な理由だけではありません。

これらの原因を踏まえ、リーダーは合意後のフォローアップとコミュニケーションを慎重に行う必要があります。

解決策をチームに浸透させるための具体的なステップ

合意された解決策を絵に描いた餅にせず、チームの力としていくためには、リーダーによる意図的な働きかけが不可欠です。ここでは、そのための具体的なステップをご紹介します。

ステップ1: 合意内容の「見える化」と「再確認」

話し合いで決まった解決策は、議事録として記録し、チーム全体で共有することが重要です。可能であれば、合意内容を箇条書きなどで明確にまとめ、誰が、何を、いつまでに、どのような状態にするのかを具体的に記述します。

ステップ2: 解決策の「意義」と「意図」を繰り返し丁寧に伝える

解決策は単なる作業リストではありません。なぜこの解決策が必要なのか、チームが抱える課題とどのように繋がっているのか、そして実行することでチームやメンバーにどのようなメリットがあるのかを、様々な機会を捉えて繰り返し伝えましょう。

ステップ3: 実行計画の詳細化と役割分担の明確化

抽象的な合意を、メンバーがすぐに取り組める具体的な行動計画に落とし込みます。誰が、具体的にどのようなタスクを行うのか、期日はいつなのか、必要なリソースはあるかなどを明確にします。可能であれば、この計画策定の一部をメンバーに任せることで、主体性を引き出すことができます。

ステップ4: メンバーの懸念や不安に積極的に耳を傾ける

解決策の実行に対して消極的な態度や抵抗が見られるメンバーがいるかもしれません。それは単なる反対ではなく、実行に対する懸念や不安、あるいは過去のわだかまりが原因かもしれません。リーダーはこれらのサインを見逃さず、積極的にメンバーの声に耳を傾ける姿勢を示すことが重要です。

ステップ5: 定期的なフォローアップと小さな成功の共有

解決策を実行に移した後は、その進捗を定期的に確認する場を持ちます。進捗が遅れているメンバーを問い詰めるのではなく、「何か困っていることはないか」「進める上で障害になっていることはないか」とサポートの姿勢で関わります。また、解決策の実行によって生まれた小さな良い変化や成功を積極的に見つけ出し、チーム全体で共有することで、ポジティブなムードを作り出すことが大切です。

ステップ6: リーダー自身が率先垂範する

リーダー自身が解決策の実行に対して真剣に取り組み、率先して行動を示すことは、チームメンバーにとって非常に大きな影響を与えます。リーダーが「言っているだけ」では、メンバーは本気で取り組む気になれません。

具体的な会話例とNG行動

| 状況 | NG行動 | OK行動 | | :-------------------------- | :--------------------------------------------------------------------- | :----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- | | 合意内容の再確認時 | 「この前決まったこと、ちゃんと覚えていますね?じゃあ、次〇〇さんから報告してください」 | 「皆さん、先日話し合った〇〇の解決策について、改めて内容を確認したいと思います。お手元に議事録はありますでしょうか。もし、内容について少しでも不明確な点があれば、この場で確認させてください。」 | | メンバーの進捗が遅れている時 | 「〇〇さん、全然進んでないじゃないですか!どうなっているんですか!」 | 「〇〇さん、〇〇の件、状況はいかがですか?何か進める上で困っていることや、手助けが必要なことはありますか。もし難しければ、一緒に方法を考えましょう。」 | | メンバーが消極的な時 | 「やる気がないなら、もういいです」 | 「△△さん、〇〇の解決策について、少し消極的に見えますが、何か懸念していることや、率直な気持ちがあれば聞かせてもらえませんか。皆さんの声を聞きたいです。」 | | 解決策の意義を伝える時 | 「これは会社が決めた方針だから従ってください」 | 「この解決策は、以前から課題となっていた△△を解決し、皆さんがより気持ちよく、スムーズに仕事を進めるために、話し合って決めたものです。実行することで、具体的に〇〇のような効果が期待できます。」 |

よくある落とし穴と対策

まとめ:根気強い対話とサポートの姿勢が鍵

チームの衝突解決において、解決策への合意は確かに重要な一歩です。しかし、その後の「浸透」と「実行」のプロセスは、時に合意形成そのものよりも難しく、根気を要するものです。

合意した解決策がスムーズに実行されない場合でも、それは決してリーダーの失敗ではありません。チームが新たな変化に適応していく過程で自然に生じる抵抗や摩擦であると捉え、冷静に対応することが大切です。

今回ご紹介したステップを参考に、合意内容の見える化、意義の伝達、実行計画の詳細化、そして何よりもメンバーの懸念に耳を傾け、継続的にサポートする姿勢を持ち続けてください。リーダーの根気強い対話と寄り添う姿勢こそが、解決策をチームに浸透させ、チームを前に進める何よりの力となるはずです。初めてのリーダーとして直面するこの課題を乗り越えることは、あなたのリーダーシップを大きく成長させる貴重な経験になるでしょう。